ガバナンス・コンプライアンス

放置すると社長個人に過料も!コレだけは絶対知っておくべき会社の登記|
変更から2週間の登記義務、100万円以下の過料、12年放置で「みなし解散」──役員任期・本店移転・住所変更の落とし穴と弁護士・司法書士の使い分け

「登記は会社を作るときに司法書士さんにお願いしたきり」「役員は自分と妻だけだから、変更なんてない」──こう思っている社長は本当に多いです。ところが、会社の登記は「作るときだけ」のものではありません。役員の任期が来た、事務所を移した、社長が引っ越した。こうした変化のたびに、法律は2週間以内の登記を求めています。そして、それを怠ったときのペナルティは会社にではなく、社長個人に飛んできます。

本記事では、動画の内容をもとに、①登記の基本と「2週間ルール」、②放置した場合のリスク(過料・みなし解散)、③登記を弁護士と司法書士のどちらに頼むべきか──の3つを整理します。法律の条文と法務省・国税庁の公表資料に基づいて解説しますので、自社の登記簿を思い浮かべながら読んでみてください。

1. 登記の基本と「2週間ルール」

登記簿は会社の「身分証明書」

会社の登記とは、会社の基本情報を法務局の登記簿に記録し、誰でも見られる状態にしておく制度です。株式会社の設立登記で記録される事項は会社法911条3項に列挙されていて、主なものは、商号(会社名)、本店の所在場所、事業の目的、資本金の額、発行済株式の総数、取締役の氏名、代表取締役の氏名と住所などです。

ポイントは、この登記簿は誰でも取得できるということです。取引先も、銀行も、採用に応募してきた人も、法務局で登記事項証明書を請求すれば(オンライン請求なら1通490〜520円)、あなたの会社の役員構成や資本金を確認できます。だから登記は、会社の「身分証明書」であり、取引相手に対する「この会社は実在し、この人が代表者です」という公的な証明でもあります。逆に言えば、登記簿の情報が古いままだと、身分証明書に古い住所と昔の顔写真が載っているようなものです。

変更から2週間以内に登記する義務

会社法915条1項は、登記した事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならない、と定めています。会社を作ったときだけでなく、登記簿に載っている情報が変わるたびに、2週間の期限付きで登記義務が発生するのです。中小企業で特に多い変更登記は次のとおりです。

登記には登録免許税がかかります。役員変更は申請1件につき1万円(資本金1億円以下の会社。それ以外は3万円)、本店移転は1か所につき3万円、商号や目的の変更は1件3万円です。決して高額ではありませんが、「お金と手間がかかるから後回し」が積み重なって、何年も放置される会社が後を絶ちません。

POINT:「登記事項が変わったら2週間」をカレンダーに入れておく

役員任期は定款を見れば分かります。任期満了の定時株主総会が終わったら、その日から2週間が登記の期限です。本店移転や社長の引っ越しも同じ。「変わった日+14日」を必ず意識してください。

参考:e-Gov法令検索「会社法」(332条・911条・915条)国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」法務省「商業・法人登記関係の登記手数料」

2. 放置のリスク①──会社ではなく社長個人に100万円以下の過料

「登記が遅れたくらいで、何かあるの?」。あります。会社法976条1号は、登記をすることを怠ったときは100万円以下の過料に処すると定めています。そして、この過料の名宛人は会社ではありません。条文が挙げているのは、取締役、監査役、執行役、清算人といった個人です。つまり、登記を怠った責任は、社長個人の財布にかかってきます。法務省も、登記申請を怠った代表者等は裁判所から100万円以下の過料に処される可能性がある、と注意喚起しています。

過料は罰金のような刑罰ではないので、前科にはなりません。ただ、突然裁判所から過料の決定が届くのは、社長にとって気持ちのいいものではありませんし、金額は事案ごとに裁判所が決めます。何年も放置してから慌てて登記すると、「その間ずっと怠っていた」ことが登記簿の日付から丸見えになる。それが過料のきっかけになります。

「登記と実態が違う」ことで生じる信用リスク

過料以上に実務で怖いのは、信用の問題です。会社法908条1項は、登記すべき事項は登記した後でなければ善意の第三者に対抗できない、と定めています。たとえば取締役が退任したのに退任登記をしていないと、その人が退任したことを知らない相手には「もう取締役ではない」と主張しにくくなります。逆に、登記簿の本店に郵便が届かない、登記上の代表者と実際の社長が違う、役員任期がとっくに切れている──こうした状態は、銀行の融資審査、補助金申請、取引先の与信調査、M&Aのデューデリジェンスで必ず指摘されます。「登記もきちんとしていない会社」という評価は、思っている以上に重いのです。

POINT:過料は「社長個人」に、信用ダメージは「会社」に

登記の放置は、社長個人の過料と会社の信用低下という二重のコストになります。銀行や取引先に登記簿を見られるタイミングで、慌てて未了の登記をまとめて申請する会社は少なくありません。

参考:e-Gov法令検索「会社法」(908条・976条)法務省「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」

3. 放置のリスク②──12年登記がないと「みなし解散」

もう一つ、知らない社長が本当に多いのが「みなし解散」です。会社法472条は、最後の登記から12年が経過した株式会社を「休眠会社」と定義し、法務大臣が官報で「2か月以内に事業を廃止していない旨を届け出るように」と公告し、それでも届出も登記もしなかった会社は、2か月の期間が満了した時点で解散したものとみなす、と定めています。

「12年も登記しないなんてあり得ない」と思うかもしれません。しかし、非公開会社で役員の任期を10年に伸ばしている会社は珍しくなく、10年目の重任登記を忘れると、そのまま12年に達するのは時間の問題です。法務省は毎年この「休眠会社の整理作業」を実施していて、令和7年度は10月10日に官報公告と登記所からの通知が行われ、12月10日までに届出も登記もなかった会社は12月11日付けで登記官が職権で解散の登記をしました。この作業で解散したものとみなされた株式会社は、令和7年度で25,195社。令和6年度は26,885社、令和5年度は27,887社と、毎年2万5,000社以上が解散扱いになっています。

みなし解散になったらどうなるか

解散したものとみなされても、3年以内であれば株主総会の特別決議で会社を継続することができ、その場合は継続の登記を2週間以内に申請します。ただし、法務省が明記しているとおり、本来申請すべき時期に登記を怠っていた事実は消えません。届出をして解散を免れても、その後も登記をしなければ翌年度もまた整理作業の対象になりますし、100万円以下の過料の可能性は残ります。「通知が来たから届出だけして終わり」ではなく、未了の登記を全部片付けるのがゴールです。

なお、登記所からの通知は登記簿上の本店所在地に送られます。本店移転の登記をしていない会社には、通知そのものが届きません。「知らないうちに自分の会社が解散していた」という事態は、こうして起こります。

参考:e-Gov法令検索「会社法」(472条)法務省「令和7年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について」法務省「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」(みなし解散数の推移)

4. 弁護士と司法書士の使い分け

「登記は司法書士、裁判は弁護士」というイメージは、おおむね正しいです。登記申請の代理は司法書士法3条1項1号で司法書士の業務とされていて、役員変更や本店移転のような定型的な登記は、司法書士に頼むのが早くて確実です。一方、弁護士も弁護士法3条の「一般の法律事務」として登記申請を行えると解されていますが、多くの弁護士は日常的に登記を扱っているわけではありません。

では弁護士の出番はどこか。登記の「前」です。登記はあくまで結果を公示する手続で、その前提には株主総会や取締役会の決議があります。この決議が有効かどうか、招集手続に問題はないか、種類株式や新株予約権をどう設計するか、M&Aに伴う登記をどの順番で進めるか、株主同士が対立していて総会が荒れそうだ──こうした場面は、法律関係を整理する弁護士の領域です。実務では、弁護士が決議や契約を固め、司法書士が登記を申請する、という連携がよく取られます。

POINT:顧問弁護士がいれば「どちらに頼むか」から相談できる

社長が自分で判断しなくても、顧問弁護士に「これ登記いりますか?」と聞けば、必要性と担当を切り分けて、必要なら司法書士につないでもらえます。登記漏れの多くは「誰にも聞かなかった」ことが原因です。

参考:e-Gov法令検索「司法書士法」(3条・73条)e-Gov法令検索「弁護士法」(3条)

まとめ

  1. 登記は「作るときだけ」ではない。役員の重任、本店移転、社長の住所変更、商号・目的の変更──登記事項が変わったら2週間以内に変更登記(会社法915条1項)。
  2. 怠ると社長個人に100万円以下の過料(会社法976条1号)。会社の信用にも直結し、融資審査や与信調査で必ず見られる。
  3. 12年登記がないと「みなし解散」(会社法472条)。令和7年度は25,195社が解散扱い。本店移転の登記をしていないと通知すら届かない。
  4. 定型的な登記は司法書士、決議・設計・紛争がらみは弁護士。迷ったら顧問弁護士に振り分けてもらう。

登記は地味です。売上にもならないし、やらなくてもすぐには何も起きません。だからこそ放置され、ある日突然、裁判所からの過料や「みなし解散」という形で跳ね返ってきます。まずは自社の登記事項証明書を1通取って、役員の任期、本店、代表者の住所が今の実態と合っているか確認してみてください。そのうえで、定款の任期や株主構成も含めて「この会社の登記はこれで大丈夫か」を一度専門家に見てもらう。顧問弁護士がいれば、こうした点検を年に一度の定時株主総会のタイミングで一緒に済ませられます。トラブルが起きてから慌てるより、はるかに安くつく予防法務です。

※本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の事案については弁護士等の専門家にご相談ください。法令・統計は法務省・国税庁・e-Gov法令検索の公表資料(2026年8月時点)に基づきます。

弁護士 越水遥
この記事の執筆者

弁護士法人越水法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、西村あさひ法律事務所を経て現職。企業法務・労務問題を中心に中小企業・スタートアップの経営を法務面から支援し、YouTube「守りの経営ch」で経営者向けの法律知識を毎日配信している。

会社法・ガバナンスの話はYouTubeで毎日配信中

公式LINEでは、YouTubeでは話せない“ここだけの裏話”と「経営法務のガイドライン」を無料でお届け中。

LINE友だち追加はこちら
← 動画記事一覧へ戻る

TOP