財務・資金繰り

会社を守るなら「債務超過」だけは絶対に避けろ
──融資が止まる危険サイン

ニュースで「29億円の債務超過」という言葉を目にしたことはないでしょうか。債務超過とは、会社の負債(借金)が資産(財産)を上回っている状態、つまり会社の資産をすべて売っても借金を返しきれない状態を指します。

「うちには関係ない」と思われるかもしれませんが、債務超過は中小企業でも突然陥る可能性があります。そして放置すれば、銀行融資が厳しくなり、資金繰りが悪化し、最悪の場合、事業の継続そのものが難しくなります。本記事では、債務超過と赤字の違いから、会社を守るために今すぐ確認すべきことまでを解説します。

債務超過とは?──赤字との決定的な違い

「赤字」と「債務超過」は混同されがちですが、この2つは次元の違う話です。

会社の貸借対照表(B/S)は「資産=負債+純資産」で構成されています。この純資産(自己資本)がマイナスになった状態が「債務超過」です。過去からの積み重ねの結果としての財産状態、いわば「ストック」の問題です。

一方の赤字は、その1年間の損益、つまり「フロー」の結果にすぎません。今期は費用が収益を上回った、というだけの話であり、単年度が赤字でも、過去に積み上げた利益剰余金があれば純資産はプラスを保てます。

ただし、赤字が何年も続いて利益剰余金を食い潰せば、やがて債務超過に至ります。また「借金が多い=債務超過」でもありません。借金が多くても、それを上回る資産があれば債務超過ではない。見るべきは、純資産がプラスかマイナスかです。

参考:中小機構 J-Net21 財務の基礎知識(自己資本・財務の安全性)

なぜ債務超過になるのか──29億円の実例

報道によれば、新潟の航空会社トキエアは、2026年3月期に約29億円の債務超過に陥ったと報じられています。しかも2期連続で、前の期の約6億円から1年で大きく膨らんだとのことです。

航空業界のように初期投資が非常に大きい業種は、立ち上げ期に赤字が先行し、債務超過に陥りやすい構造があります。しかし、これは特定の業界だけの問題ではありません。

債務超過に至る会社の共通点はシンプルで、「赤字を連続させて、自己資本を食い潰す」ことです。急拡大の設備投資、大口取引先の倒産、コスト高──きっかけはさまざまでも、利益で自己資本を回復できなければ、会社の規模に関係なく債務超過に近づいていきます。

参考:日本経済新聞 トキエアの26年3月期、2期連続債務超過(報道)

債務超過になると会社はどうなるのか

最も大きいのは、銀行融資への影響です。銀行は融資先を評価する際、純資産(自己資本)を非常に重視します。純資産がマイナスの債務超過になると、「危険な借り手」のサインと見られ、評価が大きく下がります。

これらが会社の資金繰りを締め上げていきます。

POINT:「債務超過=即倒産」ではない

ここは誤解の多いところですが、債務超過になっても、資金繰りが回っている限り会社は潰れません。破産は、裁判所への申立てと開始決定があって初めて始まる手続きです。ただし、支払期日のお金を継続的に払えない「支払不能」に陥れば話は別です。債務超過は、手遅れになる前の「危険信号」として受け止めるべきものです。

参考:金融庁 検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方破産法(e-Gov法令検索)

債務超過を防ぐため、今すぐ確認すべき4つのこと

① B/Sを開き、純資産がプラスかマイナスかを見る

損益計算書の利益だけを見て安心してはいけません。財務は、フロー(損益)とストック(財産)の両方を見るのが鉄則です。過去と比べて自己資本が減り続けていたら、それは危険なサインです。

② 利益を内部留保に回し、自己資本のクッションを厚くする

債務超過を防ぐ最大の守りは、毎年の利益をコツコツ内部留保に回し、自己資本というクッションを厚くしておくことです。派手な節税で利益を消しすぎると、この守りが薄くなります。

参考:中小機構 J-Net21 内部留保のメリットとデメリット

③ 社長からの役員借入金は「資本性借入金」として評価され得る

社長個人が会社にお金を貸している場合、その役員借入金は返済を求められにくい安定資金であるため、金融庁の「資本性借入金」という考え方のもとで、実質的に自己資本と同じように評価されることがあります。使い方次第で、債務超過の見え方が変わることもあります。

ただし、これは一定の要件を満たす場合に限られ、「必ず自己資本扱いになる」わけではありません。銀行や専門家に相談のうえ検討してください。

参考:金融庁 資本性借入金の取扱いの明確化について

④ 「数字の裏側」を社長自身が説明できるようにする

もし債務超過に近い状態にあるなら、数字の裏側を自分の言葉で説明できることが、融資継続の鍵になります。銀行は数字だけでなく、社長が財務を理解して説明できるかを見ています。財務の理解と計画的な経営──この2つが、会社を守る一番の盾です。

まとめ

  1. 赤字は「今年の成績」、債務超過は「会社の体力が尽きた状態」。純資産がマイナスかどうかで見る
  2. 債務超過は融資が止まる危険信号。ただし即倒産ではない。資金繰りが命
  3. 守りは自己資本を厚くすること。B/Sを見て、利益を内部留保に回し、数字を説明できる社長になる

経営者は損益計算書の「いくら儲かったか」は気にしても、B/Sの純資産までは見ていないことが少なくありません。しかし会社の"体力"はそこに表れます。債務超過はある日突然やって来るのではなく、じわじわと近づいてきます。早く気づけば打てる手はたくさんあります。年に一度は税理士等の専門家とともにB/Sを開き、「うちの体力は大丈夫か」を確認することが、本当の意味での守りの経営です。

※本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の事案については弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。トキエアの債務超過額(約29億円・2026年3月期)は報道に基づく情報です。かつての金融検査マニュアルは2019年12月に廃止され、現在は金融庁の融資に関する検査・監督の考え方が指針です。資本性借入金は一定の要件を満たす場合に自己資本に準じて評価され得るものです。情報は2026年7月時点のものです。

弁護士 越水遥
この記事の執筆者

弁護士法人越水法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、西村あさひ法律事務所を経て現職。企業法務・労務問題を中心に中小企業・スタートアップの経営を法務面から支援し、YouTube「守りの経営ch」で経営者向けの法律知識を毎日配信している。

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