財務・資金繰り

資金繰りの悪化は社長の判断力を鈍らせる
──お金で焦る経営者が走りがちなNG行動10選と正しい立て直し方

「今月末の支払いが足りないかもしれない」──この状態になったとき、経営者の頭の中は「どう会社を良くするか」から「どう今月をしのぐか」に切り替わります。視野が一気に狭くなり、普段なら絶対に選ばない手段が、急に合理的に見えてくる。資金繰りの悪化が本当に怖いのは、お金が減ることそのものより、社長の判断力を鈍らせることなのです。

動画では、お金に焦った経営者が走りがちなNG行動を10個取り上げています。本記事ではそれらを「焦ったその場しのぎ」「独断で会社を動かす」「無断・隠蔽・先送り」の3グループに整理し、それぞれの法的リスクと、代わりに取るべき正しい対処を解説します。

グループ1:焦った「その場しのぎ」のNG(1〜4)

まず、目の前の支払いをしのごうとして、かえって致命傷を負うパターンです。

参考:金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」国税庁「納税に関する総合案内(納付が困難な方)」出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(e-Gov法令検索)

グループ2:独断で会社の中身を動かすNG(5〜7)

次に、社長の一存で人・資産・数字を動かしてしまうパターンです。会社法や労働法の手続を飛ばした「独断」は、社長個人の責任に直結します。

参考:会社法(e-Gov法令検索)不正競争防止法(e-Gov法令検索)裁判所「最高裁平成6年1月20日第一小法廷判決」

グループ3:「無断・隠蔽・先送り」のNG(8〜10)

参考:民法(e-Gov法令検索)中小企業庁「2024年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要」(PDF)

POINT:ピンチのときの合言葉は「独断・無断・隠蔽をしない」

動画で挙げた10個に共通するのは、焦って「独断・無断・隠蔽」に走っていることです。支払猶予・リスケ・報酬カットは、すべて書面の合意にする。解雇や重要資産の売却は、労働法・会社法の手続を必ず踏む。この線さえ守れば、合法的に会社を立て直す道は必ず残ります。

正しい対処は「焦る前に、合法的な順番で」

では、資金繰りが苦しくなったら何をすべきか。答えは地味ですが明確です。

参考:中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」

まとめ

  1. 資金繰りのピンチは違法行為への入口になる。前金目当ての受注は詐欺罪、粉飾は特別背任、税金滞納は判決なしの差押え──「今月をしのぐ」代わりに会社と社長個人の未来を差し出す行動
  2. 会社を動かすときは手続を踏む。報酬カットは競業避止の合意とセット、重要資産の売却は取締役会決議、整理解雇は4要件。「独断・無断・隠蔽」が一番高くつく
  3. 正しい対処は、13週間の資金繰り表→資金ショート3か月前のリスケ相談(実行率9割超)→書面の合意→弁護士・中小企業活性化協議会への早期相談。民事再生・M&Aは早いほど選択肢が残る

お金に焦ったときの「なんとかなる」は、たいてい「なんともならない」の始まりです。手元資金に不安を感じた段階が、実は一番選択肢の多いタイミング。その段階で動けるかどうかが、会社の運命を分けます。

※本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の事案については弁護士等の専門家にご相談ください。情報は2026年8月時点のものです。

弁護士 越水遥
この記事の執筆者

弁護士法人越水法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、西村あさひ法律事務所を経て現職。企業法務・労務問題を中心に中小企業・スタートアップの経営を法務面から支援し、YouTube「守りの経営ch」で経営者向けの法律知識を毎日配信している。

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