「銀行融資が間に合わない。広告で見た『最短即日・審査なし』のファクタリングを使おうか」──資金繰りに焦ったとき、こう考えたことはありませんか。実はそこに、ファクタリングを装った違法な高金利貸付、いわゆるヤミ金業者が紛れ込んでいます。金融庁が公式に注意喚起している「偽装ファクタリング」です。契約書に「債権譲渡契約」と書いてあっても、安全とは限りません。
会社が倒れる直接の引き金は、赤字そのものより「お金が回らなくなること」。東京商工リサーチの調査では、2025年の全国の企業倒産は1万300件と2年連続で年間1万件を超え、その多くは小規模な会社です。本記事では動画の内容をもとに、資金調達の4つの種類とそれぞれの使い分け、そして弁護士が実務で見てきた「危ない調達」を見分ける3つのチェックポイントを解説します。
資金調達は4種類──「借りる」だけではない
資金調達の選択肢は銀行融資だけではありません。大きく分けると次の4種類です。
- ①借りる(デット・ファイナンス)──銀行融資のほか、国が全額出資する日本政策金融公庫の融資、信用保証協会の保証付き融資、社債の発行など
- ②出資してもらう(エクイティ・ファイナンス)──株式を渡す代わりに資金を入れてもらう方法。ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家からの出資、第三者割当増資
- ③資産の現金化(アセット・ファイナンス)──売掛金を売却して早期に現金化するファクタリング、リースバック、遊休不動産の売却など
- ④もらう・集める──国や自治体の補助金・助成金、クラウドファンディング
創業期でも使える制度は意外と充実しています。たとえば日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、これから事業を始める方や開業からおおむね7年以内の方が対象で、融資限度額は7,200万円、設備資金なら返済期間20年以内と長めです。また、信用力の乏しい創業間もない会社でも、各都道府県の信用保証協会が公的な保証人になることで民間銀行からの融資の道が開けます。国の補助金は中小企業庁の「ミラサポplus」で検索できます。
参考:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」/ミラサポplus(中小企業庁)/東京商工リサーチ「2025年(令和7年)の全国企業倒産1万300件」
使い分けの鉄則──「返さなくていいお金」と「今すぐ使えるお金」は別物
4種類には、それぞれはっきりした持ち味と代償があります。デット(借りる)の最大のメリットは経営権を手放さなくていいこと。銀行は株主にはなりません。その代わり、売上が計画どおりにいかなくても返済日は待ってくれません。ここで大事なのが、金融の世界の格言「晴れの日に傘を借りておけ」。銀行は業績のいい会社には貸したがり、苦しくなってからは貸してくれません。業績が良いうちに融資枠と取引実績を作っておくのが実務の鉄則です。毎月の入金と出金を並べた資金繰り表を作り、銀行に自分の言葉で説明できるようにしておくだけで、金融機関からの見え方は変わります。
エクイティ(出資)は原則として返済義務がなく、赤字が続く創業期や大きな先行投資に向きますが、株式を渡すため持分が薄まります。アセット(資産の現金化)は審査が比較的早くスピードが武器ですが、手数料や売却損で目減りし、売れる資産がなくなれば一度きりで終わりです。そして補助金・クラウドファンディングは返さなくていい反面、補助金は原則「後払い」。先に自分で払って事業をやり、後から精算されるため、目の前の資金繰りには使えないことが多いのです。実態と違う申請をすれば不正受給として返還を求められ、会社の信用も失います。
POINT:補助金は原則「後払い」──資金計画の落とし穴
「返さなくていいお金」と「今すぐ使えるお金」は別物です。ここを誤解して資金計画を立てると、入金前に資金がショートします。補助金・クラファンは資金繰りの穴埋めではなく、先行投資の回収手段と考えてください。
弁護士が見た「危ない調達」──サイン前に確認する3つのポイント
1つ目は経営者保証です。中小企業の融資では、社長個人が会社の借金の保証人になる「経営者保証」を求められることがあります。これを付けると、会社が倒れたとき社長個人の自宅や預金まで失いかねません。ただ、いまは全国銀行協会と日本商工会議所がまとめた「経営者保証に関するガイドライン」により、一定の条件を満たせば経営者保証なしの融資や保証の解除を金融機関と交渉できる道が示されています。あわせて融資契約書では、返済遅延などで残額を一括請求される「期限の利益喪失条項」の条件も必ず読み込んでください。
2つ目は株式の比率です。会社法上、定款変更や合併など会社の根幹に関わる決定には株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。裏を返せば、投資家に3分の1を超える株式を渡すと、その投資家は重要な決定を単独でブロックできます。過半数を渡せば役員の選任・解任まで握られます。目先の資金ほしさに株式を出しすぎて、自分の会社なのに自分で決められなくなった社長は実在します。投資契約書の買戻し条項・拒否権条項は弁護士のチェックを受けてください。
そして3つ目、いちばん怖いのが偽装ファクタリングです。金融庁は、契約書に「債権譲渡契約」と書いてあっても、経済的に貸付けと同じ機能を持つ場合は貸金業に該当するおそれがあるとして注意喚起しています。見分けるサインは、契約書に「売主が債権を買い戻す」約束が入っている、売掛先からの支払いではなく自分の資金で業者に支払う仕組みになっている、買取代金が債権額に比べて著しく低い──といった点です。資金繰りに追い詰められて焦っているときほど引っかかりやすい。だからこそ、余裕のあるうちに調達の選択肢を並べておくことが「守りの経営」なのです。
参考:全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」/e-Gov法令検索「会社法」/金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」
まとめ
- 資金調達は4種類──デット(借りる)・エクイティ(出資)・アセット(資産の現金化)・補助金/クラファン(もらう・集める)。まず自分の会社がどの引き出しを使えるか全体像を押さえる
- 「返さなくていいお金」と「今すぐ使えるお金」は別物。補助金は原則後払い、エクイティは経営権と引き換え。借入は「晴れの日に傘」で元気なうちに枠を作る
- 契約書にサインする前に、経営者保証の有無と範囲・株式の比率(3分の1超で重要決議をブロックされる)・買い戻し条項(偽装ファクタリングのサイン)の3か所を必ず確認する
資金調達は「借りられるかどうか」の話であると同時に、「会社をどう守るか」の話です。融資契約や投資契約は、サインした瞬間から会社を縛ります。健康診断と同じで、資金調達の準備は元気なうちに。攻めは税理士や金融機関と、守りは弁護士と組んで進めてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の事案については弁護士等の専門家にご相談ください。情報は2026年8月時点のものです。
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